鑑 賞 室

巧妙な手順、きれいに浮かび上がる文字。
“一局で二度おいしい” あぶり出しならではの楽しさ、面白さを、じっくりとご覧ください。



※将棋盤右上の「発表」年月は、原則として結果発表月を表しています。



ユ−1 岡本 眞一郎氏作



掲載誌 近代将棋
出  題 1998年2月



    【 発表誌解説より 】

    担当:服部 敦
 4手目55同とは54桂、66歩合、同飛、 同と、45銀、55玉、56歩、同と、同銀、44玉、45銀、43玉、42馬まで。
 8手目66歩合は同飛、同と、45銀、55玉、56歩、同と、同銀以下。
 10手目45桂合は同飛、54玉、66桂打、同と、同桂、同香、65馬、63玉、64歩、62玉、52桂成、同玉、72飛成以下。
 28手目74桂合は同馬、53玉、52馬、64玉、74飛、65玉、77桂まで35手。
 30手目72玉は73馬、81玉、86飛、71玉、82飛成以下同手数駒余り。

 7手目に桂馬をどちらに跳ねるか。誰が見たって74である。74ならば後で62ヘ成って使える。ところが54桂では6手後で取られてしまうのだから。
 もう一つ分からない事がある。43香は、見るからに邪魔駒という顔つきをしている。実際、銀をうまく動かすと簡単に消えてくれる。でもこの香を消去するのは何の為なのだろうか。
 二つの謎の間に45歩合という捨て合が入る。飛車を無力化して、同時に銀が暴れ出すのを防ぐ為である。
 調子良く桂馬を捨てて45銀。ここで意外な事実が判明する。43玉と逃げられた時に桂馬が74にいると、飛車が上がれなくて詰まない。7手目の桂馬は54に跳ねなければならなかったのだ。むざむざ取られる方が正解だなんて。
 74桂がなければ楽勝かというと、そうではない。今度は玉が63へ逃げる。85馬に二度目の捨て合の74歩。予想外の展開に、一瞬迷路に迷いこんだのではと不安になる。だがこの歩が最後のとどめを刺してくれる。43馬と引く時になって、初めて香を消去した理由が判明する。その1手後である。ユの字が盤上にくっきりと姿を現すのは。
 曲詰の中に入る妙手は全て偶然の産物である。この作の二つの伏線と二つの捨て合も例外ではない。だが曲詰という極めて厳しい制約の中で万に一つのような幸運な偶然を探り当てる為には、並外れた観察眼と知識、読みの力と幸運、その全てが備わっていなければならない。この作はまさに、その四つが結晶した最も美しい成果の一つであると言っても過言ではない。
松沢成俊 「一発大業が入れば言うことなしだったが、小味な攻防は楽しめた」
鈴木  誠 「たった一枚の歩を使い切って不安、45歩合で不詰かと不安、飛車とと金の交換と
 いう芋詰に不安、期待通り炙り出しで安心」


ユ−2 森本 哲司氏作



掲載誌 詰パラ
出  題 2007年11月
結果発表 2008年2月

『きしはじめ』名義で発表



    【 作者感想 】

比較的楽に作れた作。でも易しかったためか評価は今一つ。




   
 
 

このページのトップへ