ラ行
巧妙な作意、きれいに浮かび上がる文字。
“一局で二度おいしい” あぶり出しならではの楽しさ、面白さを、じっくりとご覧ください。
巧妙な作意、きれいに浮かび上がる文字。
“一局で二度おいしい” あぶり出しならではの楽しさ、面白さを、じっくりとご覧ください。
掲載誌 詰棋めいと
出 題 1997年6月
【 発表誌解説より 】
担当:森田 銀杏
8手目54玉は55銀、53玉、64金、62玉、63金、同玉、64銀以下
12手目55玉は44銀、54玉、66桂まで
竹内久祐=持駒なしの炙り出しは解き易いが、57銀捨てなど巧手が続く。
千葉 肇=と金の群に突っ込む57銀が三ケ月間見えなかった。
田月伽弦=何時も馬が働いている。
吉松智明=変則合の妙防をウッ力りするところ。
桑原清作=攻防が良い。そして炙り出しの趣向。
天津包子=最後はアッサりだが、旨く出来とラ。63金の配置は巧い。
梅本拓男=曲詰らしい組み立て手順に歩合が入ったのは収穫。
秋元節三=次第に盛り上がり、ハッとするフィニッシュ、そして拍手。
久後生歩=いつもながらの鮮やかさに感心。何が出てくるのか期待感があって解くのが楽し
い。
平松準一=捨て合はあるが、ほぼ一本道。
金子恒男=変化に乏しいが、まあまあの出来。
川口 優=ラの字の炙り出しだが、手順がもう少し…。
★合駒入りの曲詰というだけでも創作が困難なのに、よくも次々と捨て合入りが作れるものと感
心します。いつ動くのかと思わせる63金を壁にしたこの詰上りも意外性があって面白い。作者
としては水準の出来でしょう。
掲載誌 近代将棋
出 題 1997年11月
【 発表誌解説より 】
担当:服部 敦
2手目64玉は65飛、74玉、34龍、83玉、75桂、73玉、43龍、84玉、83桂成、94玉、93成桂、84玉、83龍まで。
8手目45桂合は67桂、同金、45飛、56玉、55飛、同玉、35龍以下19手。
どうやっても大海に逃げ出される形で一寸不安になるけれど、度胸を据えて56銀と引くと3枚の大駒がやけに頼もしく見える。逃げられても平気さ。
そこで同玉。それなら楽勝だと気を緩めてはいけない。34角に45合駒、更に63角成に対しても45合駒と、かかと一つでしのがれた時に、びっくりして同飛と取ったりすると大変である。
あわてないで合駒が何か調べるのがいい。すると、もし1回目めの合駒が歩(角)ならば、2度目の筋合駒の時に取らずに56歩(64角)と打つ巧い手が成立することが分かる。それで1回目は桂合に決まりである。
桂馬があれば逃げ道の67ヘポーンと打ち捨てて穴をふさぐことができる。今度こそ何の不安もない。不安がなければ邪魔駒の45飛を捨てる攻めかたもすぐ発見できるし、2度目の45合駒が歩と桂のどちらであるかも、余裕を持って調べることができる。
非常な難問で豪快だった塚田賞受賞作の「ル」と、易しくて繊細な本作。雰囲気は稚内と西表島ぐらい違うけれど、駒の動きのリズムの良さはおんなじだ。音楽的なんて言ったらカッコ良過ぎるけれど。そうしてこの2作にも最近の他の作品にも「捨てる合駒」が入っている。「不成」の岡本から「捨て合」の岡本さんへ変身である。
武田静山 「すっかりシリーズ化したカタカナ曲詰。変化を読まないことに後ろめたさを感じる」
藤崎正輝 「45への桂、角の合駒がまさしく計画通り」
掲載誌 近代将棋
出 題 1997年2月
塚田賞
【 発表誌解説より 】
担当:柳田 明
2手目6三歩合は、5五歩、同玉、5六銀、6六玉、7六金、5六玉、8三馬、4五玉、4七飛、4六合、同飛、同銀、
3六銀以下。
6手目5六同玉は、8三馬、4五玉、4七飛、4六合、同飛、同銀、3六銀以下21手駒余り。
前半の変化紛れが多岐にわたり、詰み筋も仲々見えず多くの方が非常に苦労された事と思う。まず5五歩と打ってみて詰まないのを確認し、やっと初手7二馬と寄る手に気付く。これに合駒は6三6二と壁が出来るので軽く香の移動合で応じ、続いて5六銀に一旦6六玉とかわすのが味な逃げ方で、金をひとつ引かしたおかげで4七飛と廻っても詰まない。そこで9五飛と縦に使うが、2手延ばしの6五歩中合まで出て最後は鮮やかに詰め上がり「ル」の字となる。
作者の一連のカナ文字シリーズもいよいよ佳境に入ったが、作品の充実ぶりには目を見張らされる。本作もその内容の濃さは曲詰以上のものがある。
岩田 茂 「危うく6五歩合を見落とす所」
森 雅幸 「手順の鮮やかさは勿論、変化紛れが豊富で中合まであり、曲詰の傑作。特に7二
馬、6三香の2手は絶大な効果をもたらしており、この作品を引き立てている」
第89期塚田賞 選考
服部 敦 「血湧き肉踊る岡本氏のルの字」
岡田 敏 「岡本氏のあぶりだし「ル」の字は密度の濃い手の連続で好作と思う」
柳田 明 「移動合中合などテクニック盛沢山の曲詰「ル」の好作を推す。変化紛れも深く、作
者の充実ぶりを示している」
谷口 均 「岡本氏作は、得意の中合入り曲詰で完成度も高い」
掲載誌 詰パラ
出 題 2008年5月
結果発表 2008年8月
【 発表誌解説より 】
担当:石黒 誠一
2手目74玉は83飛成、64玉、75銀、同玉、73龍以下。
6手目同香は64銀成、同玉、63桂成、74玉、75香以下。
10手目同玉は72銀成、同玉、62銀成、同香、同桂成以下。
14手目84玉は93飛成、同玉、62銀成、82玉、83飛成以下。
初手76金は64玉、63桂成、55玉、65金、同玉、45飛成、55歩合、69香、74玉で詰まない。
15手目94飛は84歩合、64銀成、同玉、84飛、55玉で詰まない。
作者−4段目の駒(74歩・84歩・94桂)を消去してから収束に入るのが狙いですが、他に手がな
い局面なので難しくはないと思います。
利波 偉−何故曲詰でこんなに伏線が入るんですかね? 銀が飛び跳ねる感じも良いし、曲
詰としては最近で一番良いと思う。
野口賢治−軽い打歩打開と共に忽然と現れるレリーフ。
山田和彦−盤上の3枚の銀が奮闘。15手目調子に乗って83銀生と行きたくなる。94飛が決め
手。呆れるほど駒が良く捌ける。曲詰の一級品。
須川卓二−実に内容の濃い曲詰。銀の捌きが素晴らしい。
武田静山−何が浮かび上がるのか興味津々、いつも期待を裏切らない。
☆いつもながらの曲詰の逸品、3枚の銀の舞が目を見張る。うち2枚が消え、詰上りに残る63
銀も、1往復半の動きが美しい。どうやったらここまで見事に決まるのか、ホレボレする。
中沢照夫−初形からは想像し難いあぶり出し。不成・打歩打開も入るハイレベルな作品。
S S −ようやく出るものが出た。半期おつかレさまでした。
☆本作は迷わずに採用決定。それほど頻繁に投稿をいただける作者ではないのだが、投稿作
は安定していて、安心して出題できるのはありがたい。
掲載誌 近代将棋
出 題 1995年12月
【 発表誌解説より 】
担当:森田 銀杏
千葉 肇 「序の応酬は難解だが、見当をつけて歩合を決める」
2手目4五玉には5七桂跳ひがあり(4六玉は3五角まで)、5四玉、6四金以下です。
小林 理 「3六飛捨てで3七桂の準備をしておく」
武田静山 「一番時間がかかった。ヒントがなければもっと迷ったはず」
明石頭治 「紛れは少ないが、手順はスッキリ」
大髭康宏 「畳かける収束は気持ちよい」
小泉啓信 「5五歩合は鮮やか。ばらばらの駒がロの形になっていくのが痛快」
橋本 明 「巧く字形にするもの。ロウ練さを感じる」
山岸幸徳 「角銀の動きがユーモラス。浮き上がったた文字がバランスよくて綺麗」
羽生田隆一 「広がった配置からの詰上り見事。ヒントがなければもっと驚いただろう」