サ行
巧妙な作意、きれいに浮かび上がる文字。
“一局で二度おいしい” あぶり出しならではの楽しさ、面白さを、じっくりとご覧ください。
巧妙な作意、きれいに浮かび上がる文字。
“一局で二度おいしい” あぶり出しならではの楽しさ、面白さを、じっくりとご覧ください。
掲載誌 近代将棋
出 題 1996年6月
【 発表誌解説より 】
担当:柳田 明
6手目4四銀合は、6六銀、同玉、4四馬、同龍、6七銀、5五玉、5六銀上以下。
ゴチャゴチャしているようで、よく見ると手が狭い局面である。まず3三銀を消去して3三角成から桂合をむしり取る。5八桂と打って今度は5七飛と回って合駒させるが、角合が最善なのは直ぐに分かろう。最後は飛車捨てで詰め上がり「サ」の字。
本作を見ても合駒を前提とした収束から作っているのがお分かり頂けよう。昨今の発表ペースを見ると、どうやら合駒入りでイロハ48文字全部を作るつもりらしい。そのファイトには敬服する一手である。
明石頭治 「前号に続き合駒2回の曲詰。もはや芸術家と呼んでも過言でない!」
南石信雄 「相当な創作技術。感嘆とため息」
掲載誌 詰パラ
出 題 2010年3月
結果発表 2010年6月
入選100回達成作
【 発表誌解説より 】
担当:石黒 誠一
@2手目74歩合は作意順を経て13手目85龍で合駒が悪く早い。
作者−「シ」の字のあぶり出しです。序に香合が入ったのは幸運でした。
中沢照夫−比較的素直なあぶり出し。しかし合駒読みなど内容的にも厚みがある。
☆入選100回、おめでとうございます。ここで100回中○回があぶり出し、不成の登場回数は○回、
なんてデータをさくっと示すと格好いいのですが、あいにく持ち合わせておりません。
☆@の合駒がちょっとした考え所で、変化@のように後で75歩合ができるように、ということ。
いわゆる香先香歩。さり気ない。
☆ここからは手慣れた手順で形を作っていくが、なかなか何の形かつかめない中、
収束間近の場面で飛び出す63桂の捨合に驚かされる。
これに対して同龍、44玉、36桂という余詰順を防いでいるのが24桂配置の意味。
☆収束で大駒が消えないので若干重い印象もあるが、これだけばらばらの字形なので、大駒の力が必要ということだろう。
突然文字が完成する感じがいい。
☆「不成の岡本」から「曲詰の岡本」を経ての同人入り。この先はどんな岡本へ進化していってくれるのだろうか。
和田登−あぶり出しもすごいが74香合に感動。歩合だと後で高い合駒が必要。
竹中健一−限定合と不成が入った曲詰とはサスガ!
SS−同人入りおめでとうございます。収束が唐突でしたが、よく見ると「シ」になっていたんですね。
加賀孝志−アプリ出し的手順、合が入り成功、シの字出現は見事。
掲載誌 詰パラ
出 題 1996年8月
結果発表 1996年11月
【 発表誌解説より 】
担当:関 半治
小林 徹―入玉されそうで一時は不詰かと思いました。
大前 滋―狭い玉なのに意外と難しい。殊に6手目47玉の変化を読み切る必要があり、白旗
組が多いだろう。合駒が二回入ってA。
某氏−8手目47玉、93角成に57歩の変化は割り切れるの?
☆同飛引、48玉、58飛、同玉、68飛、47玉、49香、56玉、58飛迄詰み。
☆予想通りに右の入玉されそうな不安感のある変化に、好評が集中しました。大駒の足の長さ
をいかした手順です。
☆作品の評価に変化・紛れは無視できません。適度な長さで、旨い手を含み、明確に割り切れ
るのが理想でしよう。仲々大変すが…。
濱川 礼−9手目45角がちよっと気がつきにくい。
金子恒男−一呼吸おいて合駒を取る方法を覚えました。
☆取る駒を一度動かしておく香の取り方も忘れずに。
松沢成俊−香打の非限定は全く気にならない。
☆そうです、そうです。
明石顕治−詰上り「ス」テキです。
足利太郎−不成百番に加えて捨合入りイロハ字図。夢の作品集が待ち達しい。
☆ナラズ者も今は曲詰作家。この人も四十八文字全部を作りそうですね。
掲載誌 詰パラ
出 題 2009年1月
結果発表 2009年4月
【 発表誌解説より 】
担当:平井 康雄
作者−66角を直ぐに取ると詰まないのが狙いです。途中から小駒図式になるところが気に入っています。
☆ゴチヤゴチヤした初形ですが、よく見れば手段は限られており、初手は65馬か66馬かの2択と言ってもいいところです。66馬では、以下、同桂、64龍、同玉、74金、55玉、73角に64歩合とされて行き詰まり。つまりは初手65馬として65歩を残して手を進めるのがポイントとなっているのです。
☆56香から金で66角を取れば先ほどと似た形になりますが、今度は64香合しかできないので手が進むというカ ラクリになっていたわけです。ちなみに9手目64角、同と、同龍と、普通に清算する手もありますが、これも歩しか手に入らないので、手に窮することになります。
☆香が入手できれば、56香から47飛を捌いて、最終的に47金から67桂の手段は習いあるところです。
☆44玉以下は小駒だけの細かな捌きとなりますが、特に問題もなく詰め上がることと思われます。
小川千住夫−幾つかの筋の組み合わせの順番を考えさせられた。大駒を全部捨てた後の小駒だけの収束は、正解に入っている嬉しさを実感できて気持ちいい。
木村久昭−駒数多いが、無駄駒なく「セ」が完成。
☆意外なことに、最後の形が何かわからないという評も見られましたが、この形で問題ないでしょう。67に駒がない方がいいという意見もありましたが、私の個人的な見解としては、あった方が安定しているかな?
野口賢治−都周辺なので派手さはないが大駒を小駒のように扱って全て消してみせる手並みの良さは練達の仕事人というイメージ。
☆作者はカタカナ48文字の曲詰を全局合駒入りで一旦完成されたようで、今後は作品の質を上げるべく、字毎に創り直しをしておられる由。この辺の事情は安武利太氏製作の「詰将棋五十音図」というホームページで確認できます。
掲載誌 将棋世界
出 題 1995年9月
【 発表誌解説より 】
担当:伊藤 果
”不成物”にこだわり続けた作者が、最近は一転して”曲詰”にこだわり続けています。本局はその中の一環で「ソ」の字のあぶりだしです。曲詰といえども手順も一級品で、6手目の5五馬移動合にはハッとさせられます。攻方の角がダンスのように舞いながら、空中に浮かび上がる文字は、まさに美の世界です。
神尾誠 「5五馬が曲詰らしい移動合」