岡本眞一郎作品集


ナ行

巧妙な作意、きれいに浮かび上がる文字。
“一局で二度おいしい” あぶり出しならではの楽しさ、面白さを、じっくりとご覧ください。




掲載誌 近代将棋
出  題 1995年11月



    【 発表誌解説より 】

    担当:柳田 明
 作者名プラスこの配置とくれば不成入りの曲詰を予想するが、期待にたがわず飛不成2回に桂合の「ナ」の字である。2八角を使うために5七歩は当然の一手だが、この作者だけに早めに歩を手放すのにどうも抵抗感?がある。
 センスがいいと思うのは詰め上がり駒の5四桂を開王手で跳ねさせた点で、こういう縦棒の作り方があっただろうか。常に一定レベル以上の曲詰を安定して出して来られ、不成の期待も裏切らないのは流石である。
橋本  明 「お得意の”ナ”ラズを折り込んだ曲詰。易しいながら巧いものですね!」
萩本佳秀 「桂合は4六でも同じかと思ったらそれは4八桂で早かった」




掲載誌 詰パラ
出  題 2010年1月
結果発表 2010年4月



    【 発表誌解説より 】

    担当:平井 康雄
6手目同角は同銀成、同玉、63歩、同玉、74角打、72玉、83角成、81玉、82歩以下。
14手目63玉は64歩、53玉、54歩、43玉、52銀生、同玉、53歩成、同角、63歩成、43玉、54銀、32玉、21飛成、33玉、43銀成、同玉、53と以下。
22手目63玉は41桂成、33歩合、74銀、64玉、73銀生、63玉、64歩、53玉、62銀引生、43玉、65角以下。
22手目53玉は41桂成、33歩合、54歩、63玉、33飛成以下。

作者−31手目の65角から54桂合が10年ほど前からあった素材です。19手目52銀成から64桂の打ち換えを入れることができて作品になったと思います。
☆73歩成から63金は自然な展開ですが、62金に同角の変化を読まされることになり、これを克服してやっと6手目64玉と決定されます。
☆65歩で桂を質駒にして銀の上下運動でこれを取得しますが、ここで(14)63玉の変化がまたかなり難しい。
☆53玉に54歩から53歩成で43桂を消去しておくのは後の変化(ハ)に備えた伏線手です。
ここからおもむろに52銀成から64桂と打ち換えるのが決め手となります。
☆21飛成、33玉の際、いきなり43銀成としないで、51銀を消去しておくのが抜け目ないところです。
☆65角に54桂合が味のある捨合。こういうおいしい素材を見つけるのも才能の一つと言えますね。最後は鮮やかな「ニ」が浮かびます。
斉藤博久−適度の変化があり解後感が良い。
須川卓二−煩わしい手も少なく気持ちよく解ける。邪魔駒消去&捨合と要所も締める順はさすがです。
和田登−うまい収束に、ニんまリ。
賀登屋−詰上りの不動駒が多すぎる。
☆確かに、8枚中5枚が不動というのは多すぎるようすが、長手数なので気になりにくいのも事実かな?
☆作者は既に合駒入りカタカナ曲詰全48字を完成されていますが、そのうち「ニ」は不完全作が収録されていました。本局をもって真の完成となるようです。
☆ついに次で同人入りですね。




掲載誌 詰パラ
出  題 2011年8月
結果発表 2011年11月



    【 発表誌解説より 】

    担当:利波 偉
 6手目46香合は57飛、同玉、46銀、66玉、35銀、75玉、86銀、74玉、76飛、83玉、73飛成、同玉、84銀、同玉、85香、93玉、94歩、同玉、72角成、93玉、83馬迄。
 6手目46桂合は57飛、同玉、68金、48玉、49銀、37玉、27飛、36玉、53桂成、45香打合、 同角、同玉、46歩、55玉、67桂、46玉、57金、45玉、46香、34玉、24銀成迄。
 6手目36桂合は57飛、同玉、68金、56玉、36飛、55玉、56飛、同玉、67金、55玉、56銀、 54玉、46桂迄。
 5手目同飛は同玉、68金、48玉、49銀、37玉、27飛、36玉、53桂成、45香打合以下不詰。
 7手目同飛は46桂合、57飛、同玉、68金、48玉、49銀、39玉以下不詰。

作者−「ヌ」の字のあぶり出しです。78王の配置は余詰と不詰防止のためです。 逆打歩詰や逆王手期待をされた解答者の方には評価を落としてしまいそうですが、 際どい変化紛れの中で狙いの35歩の移動合が成立したのは運が良かったと思っています。
飯尾晃−やはり36歩が出ましたね.詰上りの予想が全然つきませんでした。
小川悦勇−34桂はソッポな感じ、それに対しての36歩の突き捨て合が本作の見所、合駒を主眼として銀生を絡ませた手順は見事です。
三輪勝昭−移動中合を直ぐ取らないのは中々創れない。
☆銀生の入る序の後、4手目57飛では46桂が邪魔駒になってしまうので、34桂と跳ねるのがポイント。 この6手目の受けが序盤にして最大のクライマックス。46に香・桂合する難解な変化が解答者の前にたちはだかる。 その変化の中で、49銀と打った時、39玉に29飛とさせない為の36歩の突き捨てが必要なのだ。そうであるのなら、 36桂合の方がひも付きなので有利に見えるが、変化にあるように早いというのは、本当に巧妙に出来ていると思う。 36歩の突き捨てに対し、先に57飛と切って、68金を決めて48玉と行く変化を無くしてから36飛と取るのも理屈は解るが、 実現するのは作家としてかなりの力量が必要であろう。その部分を抜けてしまえば、角合は入るものの、軽い手順で「ヌ」の詰上りとなる。
☆「ヌ」の字の創作は難しいと思うが、破綻なく纏めているのはベテランの技で、収束部分は流れるような手順となるが、 序の精密な手順は毎度のことながら、曲詰の一般的な攻防を超えており、この部分では岡本氏ならではの作品といえよう。
今川健一−36歩の突き捨てを発見。さすが岡本さんと感服。ここからは一気?に詰め上げて、涼風来る。
小林徹−かなり団子でごちゃごちゃしているが解れだすと速い。
占魚亭−流れるような駒捌きの中にさりげなく不成・移動合・中合を盛り込む手腕は流石の一言。
那須清一序盤は難しい。序盤に比重がかかり過ぎている感じがします。
凡骨生−この凝り形をどうほぐすかで手間取りました。終盤に角合を強要するあたりは流石です。
水谷一−解いて充実感を味わえる内容の濃い力作。




掲載誌 詰パラ
出  題 1996年11月
結果発表 1997年2月



    【 発表誌解説より 】

    担当:安江久男
 2手目73金合は同馬、同香、55銀、同角、54金、65玉、55金、同玉、46龍、65玉、54銀生、同玉、45角以下。
 8手目66桂合は同香、同玉、57龍、65玉、67龍、66合(桂は売れ)、57桂以下。

谷岡里覧−選題の言葉はヒントでしたか。
詰 鬼 人 −ネ年に相応しい曲詰で、双玉も使いようによってはまだ開発分野が多くありそうで
 すね。
☆ある人が電話で「今年をネ年とはヒドイ誤植だ」そうでネえ、ちゅうだ。
☆「不成の岡本」が曲詰の連作を始めた。イロ八字詰48局を目指したものかと聞えば、そこま
 では未定とか。「ネ」の字、手順を追ってみれば、玉の行動範囲は狭い中心部に限られ、周囲
 の駒は玉をオリに囲う役割と知れる。飾り駒を排除するだけでも容易でない拡がりに、大きな
 世界(文字)を小さく使う、巧さと狡さと紙一重の構図の妙がある。
後藤元気−暗算で解いたので最初は気付かなかったけど盤に並べてビックリ!そのあと納
 得。
秋元節三−2手目合駒の変化を考えすぎて、逆王手の妙味をあやうく味わえなかったところ。
原田清実−逃げられそうな序盤も捨合の入る収束もいいですね。
☆のっけから厄介な合駒の読みだ。82角成は73合に74銀成、65玉、75成銀、54玉、72馬の含
 み。常識的な飛金合は、得たりと切られるので、73香上が75に利かせた軽妙な切返し。この
 移動合に始まり、単純合から狙いの捨合まで、異種合の競演は、灸り出すだけで難しい文字
 だけに見事なものだ。しかし、それでも解説子には、双玉図での46桂合成立に若干不満が残
 る。筋だけとれば、玉を置かずに実現できるからだ。
風みどり−桂を出すための双玉ですか。
平井康雄−どんな難しい字でも捨て合入りでまとめるとはさすが。しかしできれば双玉でなく、
 まとめて欲しかつた。
☆こうした使途も、模索が進むうちに、次第に違和感が消えて行くのかもしれない。




掲載誌 近代将棋
出  題 2008年6月

(休刊のため結果発表なし)



 残念ながら近代将棋誌は本作が掲載された2008年6月号をもって休刊となり、本作の結果発表を見ることはできなくなってしまいました。そこで本作に対する短評を募集し、同時に隅の老人A氏に直接お願いしたところ、短評ならぬ長評を頂戴しましたので、勝手ながら「解説=隅の老人A氏」として紹介させて頂きます。ご了承ください。

    担当:隅の老人A
☆ノ の字で「炙り出し曲詰を創りましょう」と思いついて最初の難関にぶつかるのが詰上がりの
  形です。
  最初に考えるのは「斜め一線」にする案ですが、これがやたらと難しい。
  普通の人はこれで「やーめた」となり、投げ出します。
  そこは岡本さん、上手い字形を考える。これなら逆算も可能になってくるだろう。
T−「おぃ、おぃ、つまらない所を褒めるじゃないか。手順はどうなんだよ」
A−「手順ですか? 既に独自のブランドを立ち上げている岡本さんにコメントなどおこがましい
   よ。」
T−「そう言わずにどうぞ」
A−「どちらかと言えば、捌き主体の古いタイプですね。
   序の合駒稼ぎなどは少し“今風”でしょうか?
   岡本さんを感じるのは、質金を狙っての銀の捌きかな」
A−「岡本ブランドの特徴は単に捌きだけには終わらないところです。
   “不成り”とか“意表をついた合駒”とかが出てきたりする。
   それで、解答者は一様に期待をこめて取り掛かります。
   と、言っても全部が全部そんなに上手くは創れない。
   イロハ、48文字の中には“これで勘弁してや”の作品が混ざってきます。
   本作、岡本さん自身、見え見えの質金などを置いて“勘弁してや”の作品と思っている。
   違ったかな?」
☆兎角、一流作家ともなると「〇〇さんにしてはいただけない」と酷評の矢面に立たされます。
  友達のBさん曰く“有名税”だとさ。
☆私も随分と有名税を払いました。
  御免なさい、岡本さん。 私と一緒に有名税を払ってください。

角  建逸−ひと目創作の難しい字形です。うまい収束が思いつきません。本作、玉が7筋6筋
  を上下するあたりがいい感じですね。というか、むしろここを強調して作ってあればと思いま
  した。
大橋光一−25手目、4三角成と4三角生の非限定あり。詰上り図が2通りとなります。 当初の
  配置図を3四角より3四馬とする修正図を提案します。
三角  淳−85歩が捨合での実現ならという部分はあるにしても、収束に変同がない事と、がっ
  ちりした長手順の駒捌きという点では、「歴代のノの字詰の作品群」の中で見て上位の内容
  といえるのでは。
市島啓樹−あぶりだしとしてはオーソドックスな捌き主体の手順で、解いていて楽しくなります。
  65銀と捨てて龍を77に据えなおすのが好手順で、最初は74龍のところ43角生(笑)として
  何度も首をひねりました。
馬屋原剛−中盤の銀の動きが華麗です。ただ、収束に捨て駒が欲しかったです。

  ※私も有名税を払いたいのに、誰も受け取って くれません…(笑)
    短評をお送りいただいた皆さん、ご協力本当にありがとうございました!




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